2021.10.14
Project note:
薄野喫茶パープルダリア
解説
10月7日に薄野喫茶パープルダリアがようやく営業を再開しました。また国の要請次第ではまた休業になる可能性もありますが、OPENからまだ休業の方が多いこのお店はお店の印象を世間に残せていないため、これからしっかりと営業していきたいと思います。
この場所は50年続いたTOPという喫茶店があった場所です。さらにこの場所は「探偵はBARにいる」の中で「喫茶モンデ」として登場したロケ地でもあります。こういった歴史ある場所が空くことになったのもコロナ禍の影響なのかもしれません。このコロナ禍の状況だからこそ新たなチャレンジをしたい。そして飲食業界の明るい話題を作りたい。その思いから、様々な計画を母体のワンダークルーで練っていた時にお声がけをいただき挑戦を決めた物件です。前出のこの箱の歴史から、ナガヤマレストの経験がこの場所で活かすことができるのではないか。さらにそこに新しい試みを付けて新業態を作ろうという構想はすぐにできました。そうして歴史を丁寧に活かしながら、新しい業態を生み出していくこととなりました。
近年、ススキノ・大通り界隈からなくなってしまった喫茶店の数々あります。今のススキノであれば逆に喫茶店を新たなスタイルで復活させることができるのではないか?という考えからプランニングに入っていくことに。50年続いた喫茶店があった場所に、また新たに喫茶店をオープンするにあたって、何か温故知新のような行為を通した表現がしたいと考え、昭和モダンの喫茶店文化を研究することにしたのですが、面白かったのは「花」がとても象徴的に使われているように感じたことです。例えばお店の名前自体に花の名前がついていたり、ド派手な花がお出迎えする内装や、席に花を飾る店舗が多かったり、カップにも花の装飾が多かったり。きっと携帯やアプリなんかが無い時代では、今よりも対面することをみんな大事にしていて、その瞬間を華やかにしてあげたいという時間を大切に考える想いがあり、その気持ちの表現として花が大きな役割を果たしていたのではないかと思いました。個人的にも以前フリーペーパーで見た喫茶声の写真(札幌のカメラマン古瀬さんが撮影したもの)に写っていたお母さんと大きな花の写真を鮮烈に記憶しています。惜しまれながらもなくなったススキノのサンローゼのサインなんかもみなさん強い印象で記憶に残っているのではないでしょうか。こういった記憶の部分からもススキノらしい喫茶を作っていきたいと考えるようになりました。
そうして決まった店名の「パープルダリア」。ダリアの花言葉は、「優雅」「気品」「栄華」「裏切り」「移り気」「不安定」などとあります。花言葉がまるで夜の街ススキノを表しているようでした。ちなみに「パープル」は紫が赤と青を混ぜた色であることから、男女が行き交う街ススキノを表現しています。
「薄野喫茶」という業態名で、ススキノの環境を受け入れるような姿勢を表現。喫茶・レストランスタイルにすることで、レストランとしてランチとディナーともに満足いただけるよう、手間暇をかけた煮込みハンバーグカレーや懐かしのオムライス、ビーフシチューと洋食メニューを方法にラインナップさせました。さらに喫茶店としても、コーヒーやプリン、フルーツサンドなどの軽食と、まるでミニブーケのようなパープルダリアのコンセプトを体現するオリジナルのパフェも開発。パフェは様々なスパイスを使った少し癖のある味付けで、ススキノの人々の個性や人間味を感じるようなラフでいながら綺麗にも見える、ススキノの世界観を表現するようなビジュアルにしています。パフェのデザインは喫茶に飾ってある絵画のような雰囲気にしたくて、調理に感覚を求める料理人泣かせのデザインになっています… 兎に角、こうして具体な時間帯ごとの来店目的を様々なペルソナイメージから作りあげることで、ランチやディナーはもちろん、カフェタイムも、お酒の後の〆としても、様々なシチュエーションで皆さんがくつろぎながらお食事も一緒にお楽しみいただけるスタイルを作っています。
実際にOPENしてからは様々な年代の方にご利用いただき、現時点で既にたくさんの方にご利用いただき、様々な声をいただきましたが、今までであればススキノのあの場所では、なかなか見られなかった時間帯に人の流れが見られるようになり、オープン後にお客様から「この地域に新たな若い層の流れもできているようです。ススキノが明るくなりましたね。」と言っていただきました。これはとても大きな成果なのではないかと感じています。
プロデュースしていく中で、飲食店として大事な立地条件を強い武器として利用することを考えながら、地の利を活かすことを大切に進めていき、さらに新たな可能性を模索するように進めていきました。飲食店の出店ひとつでも地域環境に変化をもたらすことができる好例になれば嬉しいです。歴史を飲み込みながら現代的に吐き出されたこのお店が50年後も生き残っているかはわかりませんが、50年前からの歴史をしっかりと感じながら、次の50年を目指すために必要なことをしっかりと考え、若い方もたくさん訪れていただけるいい業態になったのではないかと感じています。みなさんに長く愛されるていくことを願っています。
10月23日のTVH「けいなび」(am 11:30)で弊社のWONDERCREWの特集を組んでいただく予定です。その中でもパープルダリアに少し触れていると思いますので、ぜひご覧ください。あんクリームサンドのテイクアウトも始まりましたのでぜひ足を運んでみてください。