2020.10.20
Project note:
Nagayama Rest
解説 No.01
「はじめに」
既に行かれたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、札幌市が2018年に有効活用をすることを目的としてリニューアルをした「旧永山武四郎邸及び旧三菱鉱業寮」の中に「Nagayama Rest」というカフェがあります。STUDIO WONDERではこのカフェのプロデュース、アートディレクション、グラフィックデザイン、インテリアデザインを担当しています。「Project:Nagayama Rest」ではこのプロジェクトに対するSTUDIO WONDERの取り組みや想いをみなさんに紹介していきたいと思います。
グラフィックデザイナーという本来の立場からさらに領域を広げて、このプロジェクトの広域に関わってきました。プロジェクトがどう生まれ、地域にどういう効果を生み出したのか。プロジェクトの背景を少しだけ知っていただき、まだ来たことのない方にも、来たことのある方にも、より興味を持っていただければ嬉しいです。
「背景」
施設のリニューアルに伴い、耐震工事、補強・補修工事が行われていますが、今まで物置として使用されていた旧食堂スペースを有効活用し、飲食店を作るというのがこのリニューアルの大事なポイントのひとつでした。施設自体は無料で観覧が可能ですが、今Nagayama Restがある場所はリニューアルされる直前は人の入ることができない物置だったのです。今考えるとなんともったいない。
NC・MMS永山邸等運営管理共同事業体様とSS計画の酒井様が、札幌市が主導の施設の運営管理募集プロポーザルに参加されることとなった際に、飲食部分の協力会社としてWONDER CREWにお声がけをいただき、WONDER CREWのデザイン事業部である私たちSTUDIO WONDERがこのカフェの開発業務を担当することになりました。カフェの運営も母体のWONDER CREWです。プロジェクトのスタートから現在までこのプロジェクトを見続けていることになります。
「プロデュース」
実際にプロデュースで何をやっているかについて少し触れたいと思います。プロデュースの詳細で何を担っているのかというと、このお店をどんな業態にして、どんな人たちにどう使って欲しいかということから、立地条件から導き出した来て欲しい人たちに興味を持ってもらえる業態コンセプトの開発、そこから派生したメニュー構成、メニューに合わせたテーブルウェア、コーヒーの味、パフェやプリンアラモード、フルーツサンドのデザイン(ルール決め)なんかまで関わっています。
具体的にいうと、「パフェはこういうスタイルでやりたい。=若い方に魅力を感じていただくため」、「ビーフシチューの味にこだわりたい=ただの喫茶ではなくお食事もしっかりと懐かしく美味しいイメージを持たせるため」等。このプロジェクトでグラフィックデザインからインテリアデザインまで一気通貫したコンセプトで進めることができたのは、それ以前に企画開発からプロジェクトの芯をしっかり考え、決め、丁寧に肉付けしていったからです。運営も自身の会社によるところもあり、まるで自分たちのお店のように決めていっていますが、考え方としてはSTUDIO WONDERが運営するわけではないので、OPEN後は店舗スタッフたちと、そこにいらっしゃるお客様のお店という考えです。
私(野村)はSTUDIO WONDERのアートディレクター・グラフィックデザイナーですが、飲食の会社の専務という立場から様々な業態の開発業務に関わってきました。そこでいつも大事にしてきたことがコンセプト。グラフィックデザイナーとして形を決めるときと同じく、コンセプト。コンセプトが目的とゴールを明確にし、形を作る理由となるわけです。「Nagayama Rest」の業態は和洋折衷喫茶ですが、カフェの存在意義は文化財の拡散と考え、さらに有効活用というプロジェクトの目的に対し「文化財をより、身近に感じて欲しい」という想いで若い方の思い出にも残るような、それでいて気軽に訪れることができるカフェにしようと考えました。若い方の記憶に残るということは、「昔、あそこにパフェを食べに行ったことがあるけれど、とても美味しかったよ。」と地域の人々の生活の中のひとつの記憶として、長く残るということです。そしてカフェが話題に上がることで、たくさんの方が文化財に訪れ、知っていただく機会を作り出したいと考え、進めていきました。Nagayama Restの大義は「10年後も20年後も、あそこに行ったことがあると市民の記憶に残る文化財」となったのです。
ちょっと長くなってしまったので、続きはまた次の回で。次回は空間デザインやグラフィックデザインのことについて書きたいと思います。それでは。